せどり虎の巻

せどりは商売の基本

よく「せどりは商売の基本」といわれます。
せどりはシンプルに利ざやを稼ぐ仕事ですし、商売というものを突き詰めれば、それは転売行為だからです。
ここでは「せどりは商売の基本」といわれる理由を私なりに解説します。

需要と供給の関係を知る

せどりが扱う商品、本・DVD・CDでは絶版となっているものが多くあります。
人気のある絶版商品であれば、高値で取引されます。
簡単にいうと、これが需要と供給の関係です。
せどりは需要と供給の関係を否応なしに学びます。
そこにも「せどりは商売の基本」といえる理由があります。

商品を丁寧に扱う

ブックオフなどで仕入れる商品は丁寧に扱いたいものです。
なぜ、商品を丁寧に扱うのでしょうか。

ブックオフでセールがひんぱんに行われていた頃、非常に多くのせどりが店舗で仕入れをしていました。
特にセールの日は50冊とか100冊以上を仕入れるので、商品の扱いが雑になりがちです。
他のせどりの仕入れ方をみていて、ある法則に気がつきました。
それは、商品をカゴに投げ入れるようなせどりはやがて見なくなる、というものでした。
この法則には例外がありませんでした。
つまり、商品を雑に扱うようなせどりは、お客様のことを考えていないのです。
読む人のことを考えたら、なるべく傷まないように扱うのが商人のあり方です。
私はそこにも商売の基本を学びました。

検品をしっかりする

 

アマゾンで中古本を出品する際には、可・良・非常に良・ほぼ新品などの品質レベル(コンディション)を自分で申告します。
自分が申告した品質レベルと実際の商品の品質レベルに大きな隔たりがある場合は、購入者から悪い評価をもらうことがあります。
多くの出品者は高評価90%以上で収まります。
しかし、検品が雑だったり、販売体制に難がある出品者は高評価80%台という芳しくない状況に置かれます。
すると、そういう低い評価の出品者は出来るだけ避けたいと購入者は考えますから、その出品者の商品は売れにくくなります。
つまり、世間の評判の善し悪しが売上を左右するという商売の基本を、ここでも学ぶのです。

お客様のことを考える

 

せどりは直接にお客様と接する機会は少ないのですが、商品を通じて常に購入者を意識する仕事です。
それは、お客様が「何を求めているか」を考え、行動する仕事だということです。
お客様が「何を求めているか」を考え、行動する仕事、それが「商売」なのです。

購入者は誰か

前項の内容と少し似ていますが、ここからはより実際的な内容になります。

どんな人がこの本を必要とするかを考える

熊本地震(2016年4月14日)の1週間ほど後、ブックオフでこのような雑誌を見つけました。

防災ブック

サーチしてみたら2014年発行の絶版の雑誌で、出品者がゼロになっていました。
古い雑誌なのになぜ、出品者がゼロなのでしょうか?

そうです。熊本の地震を経て、多くの人が地震に備えようとして、この雑誌に殺到したのです。
「モノレート」(アマゾンの商品ランキングと価格推移を調べられるサイト)では、この雑誌のグラフはこのようになっていました。

防災ブック

モノレートのグラフの見方を説明します。
グラフの最上段は中古の最安値の推移です。
中段は出品者数の推移です。
最下段はランキングの推移です。

中段のグラフに4月14日0時に合わせた吹き出しがあります。
4月14日0時の時点ではこの雑誌の出品者数は9人だったのです。
その後、14日の夜に熊本で地震が起き、それを機に出品者数が一気に減っています。
つまり、地震をきっかけにこの雑誌が急に売れ出したのです。
最下段のランキングにも急上昇した形跡が残っています。
最上段の最安値は地震直後には変化はありませんが、数日後に2,500円や10,000円をつける出品者が現れています
これは俗に俺様価格と呼ばれるもので、出品者が相場を無視して価格をつり上げただけです。
私はこの雑誌を1,800円で出品し、すぐに売れました。


せどりの仕事は、どんな人がこの本を必要とするか、を考えることです。
私が販売したのは雑誌ではありません。
この雑誌を読むことで得られる安心感なのです。
本来の価値は300円位の中古雑誌です。
本来の価値よりも高値で売れたのは、あのタイミングでなら「安心感」という付加価値が高まったからです。
ブックオフでこの雑誌を目にした時、地震の直後だから安心を求めてこの本を必要とする人がいる、と考えて私は仕入れたのです。
それが、「どんな人がこの本を必要とするかを考える」ということです。
細かい話をすると、この本は2016年3月に 新版が出版されています。
普通は新版が出たら旧版は需要がなくなります。
この旧版に限ってはサブタイトルに「ペット・・・を守る」と題されていたため、愛好家が求めたと思われます。
需要が保たれた理由は定かではありませんが、最近売れた形跡があれば仕入れても大丈夫です。

相場観をつかむ

最初のページで述べたように、せどりや転売の才能はある程度生来のものです。
私には、せどりの才能が多少恵まれていたようです。
ただ、一つ一つの商品を考えながら仕入れることで、せどりの嗅覚は磨かれたとも思います。
そして仕入れを重ねて、嗅覚が磨かれることで、どんな本にどんな価値や需要があるのかが何となくわかってきます。
そうすると、感覚的に仕入れられるようになりますし、アマゾンランキングの意味も感覚的につかめてきます。

アマゾンランキングの意味

いまのせどりはアマゾンでの中古相場を基準としています。
仕入れ基準は相場価格だけではありません。
人気の指標である「ランキング」も重要な仕入れ基準です。
たとえばある本の中古相場が1,000円だったとします。
この本のランキングが非常に高かったとすると、現在の相場価格1,000円で売れることが確実です。
その本が、ブックオフの200円コーナーに並べられていたとすると、利益が500円位は取れるので、私だったら仕入れます。
反対に、その本のランキングが低かったとしたら、仕入れるでしょうか。
普通であれば、仕入れない方が安全でしょう。
なぜかというと、ランキングが低いということはその本を欲しがる人が少ないのです。
その本を仕入れて出品したとしても、売れるのは半年後になるかもしれません。
そうすると、現在の中古相場1,000円は保証されません。
たいていの場合時間の経過とともに中古相場は下がりますから、半年後には300円位になっている可能性があります。
そうすると、売れたとしても利益は出ないことになります。

私のアマゾンランキングの考え方

いままで述べたことは、一般的なランキングの考え方なのですが、私はわりと低いランキングの本でも積極的に仕入れていました。
  
「本」のアマゾンランキングは1位から250万位ぐらいまでさまざまです。
実際のところ、200万位以下のものは「売れる見込みがない」と考えた方が良いでしょう。
時間がかかるにせよ売れる見込みがあるのは150万位ぐらいまでです。
100万位までだよ、という人もいるでしょうし、30万位までだよ、という人もいるでしょう。
しかし私は価値がありそうなものに関しては、150万位ぐらいまで拾っていました。
なぜでしょうか?
150万位というランクがついているということは、数ヶ月前にそれが売れた実績があるという意味だからです。
一方で200万位以下になると、3年ぐらい売れない商品でもランキングに変動がなくなってきます。
つまりランキングが信用できなくなるのです。
ランキングの変動を信用できるのは150万位ぐらいまで、というのが私の印象でした。
もちろん非常に低ランクの本を仕入れるのですから、売れた場合に大きな利益が見込めることが前提です。

私は、1万位の本は1日に1冊売れている、という仮説を立てていました。
20万位の本は20日に1冊売れていて、100万位の本は100日に1冊売れている、と。
そうすると、仮にランキング100万位の本ばかりを100冊仕入れて在庫していたとするとそれらはどれ位の割合で売れるか、と考えたのです。
私は、ランキング100万位の本が1日1冊売れていく、と想定しました。
100日に1冊売れる本が100冊あるわけですから、その可能性はあるわけです。
この仮説はあくまでもイメージです。
具体的な期待感は何もありません。
ただし、イメージとはいえ、仮説が大きく間違っていたら修正しないといけません。
私は修正しませんでした。
ランキング100万位や150万位の本でも、1年や2年の長いスパンでみれば、ほとんどが売れていたからです。
もちろん、高ランクの本ばかりを沢山仕入れられればその方が良いのですが、いまのブックオフでそれは望めません。
そうすると、どんな本を狙えば良いのかがおのずと見えてきます。

どんな本を狙うか

基本的には絶版本を狙う

絶版本で、かつ市場相場が高騰しているものを狙います。

絶版本を狙うメリット

ブックオフの値付けは定価を基準とします。
アマゾン相場に連動した現在でも、定価以上の値段をつけることは(基本的には)ありません。
そうすると、絶版本で相場が高騰しているものに関しては、大きな利益が得られることになります。

絶版本を狙うデメリット

売れるまで時間がかかる場合が多いことです。
その本は価値(人気)があり、かつ市場に出回っている数が少ないために、相場が高騰しているわけです。
人気があるとはいえ、定価の数倍もする本にはおいそれと手が出ませんので、売れるまでに時間がかかります。

究極の絶版本―赤本

大学入試を控えた受験生が志望校の傾向を知るために解く問題集です。
過去3年分ぐらいの問題がそのまま載っていて、解答と、教学社による解説が載っています。
赤本は一年中相場が高騰するわけではなく、試験前の12月頃から1月にかけて高騰します。
特にセンター試験が終わる1月中旬から下旬にかけては、急騰していました。
そのことを知っているせどりは、あらかじめ高い価格設定をしておき、受験シーズンに一気に売れるのを待つのです。
しかし近年は、ネットで過去問を閲覧できるサービスや試験制度改革の影響で赤本の必要性が薄れ、相場は急落しました。
また、2020年度入試からセンター試験が廃止され、いままでの一発勝負の入試もなくなっていきます。
そうすると過去問を研究する必要もなくなるので、おそらく赤本は消滅するでしょう。
ただ、赤本は絶版本の価格変動を象徴しています。
どの大学のどの年度の赤本が高騰しているかを探ると、絶版本が高騰する理由がわかり、せどり脳が鍛えられます。
詳しくは次ページで説明します。

資金を確保するために回転本を狙う

回転本とは、高ランキングの本です。
アマゾンに出品するとすぐ売れるので、すぐに資金が回収でき、次の仕入れ資金を確保できます。
ベストセラーになるような本は、ブックオフがアマゾンの中古本相場に連動している現在、利益は多くは望めません。
そのため回転本を狙うことはせどりとしては旨味がありません。
しかし、前述の絶版本は回転が遅いのが普通ですので、そのデメリットを補うために回転本やランキングが高めの本を併せて仕入れることが重要になります。

せどり脳を鍛える

アマゾンランキングの大体の見当をつけ、さらに絶版本を狙って仕入れていけば、せどり脳は自然と鍛えられます。
ただ、小型バーコードリーダーは使わないことをお勧めします。

小型バーコードリーダー

バーコードリーダーを使わないことをお勧めする理由は以下の2点です。

バーコードリーダーを使うと脳を使わなくなる

これは私が体験して実感しました。
せどり初期の頃、ライバルの多くがバーコードリーダーを導入して仕入れをしていました。
ガラケーで一点一点検索していくスタイルの私は、焦りを覚えました。
そこで私もバーコードリーダーを買い、ブックオフで本の検索をしてみたら、意外なことに気づきました。
それは、次々と本にバーコードリーダーを当てていると、せどりの嗅覚が利かなくなったのです。
どんな人が買う本だとか、アマゾンランキングのロジックとか、この本にどんな価値があるかとか、全く思い浮かばなくなったのです。
これは衝撃でした。
私は右利きなので、右手でガラケーを操作していました。
つまり、ガラケーの物理ボタンを右手で押すことで、左脳(論理思考を司る)を刺激していたのです。
もちろんバーコードリーダーも右手で操作しますが、1冊につき1回決まったボタンを押すだけです。
ガラケーではISBNの8桁を入力しますし、別個のボタンなので、そのぶん指も広範囲に動かします。
指を使うとボケないといいますが、手指の動きと脳の働きは直結しているのだと思いました。

バーコードリーダーを使うと挙動が目立ちすぎる

ブックオフの店内でスマホや携帯を操作していても、せどりか一般人かは必ずしも判別できません。
しかしバーコードリーダーを操作していれば、せどりだと一発で判断されてしまいます。
最近(2016年6月現在)のブックオフでは店舗によってはせどり行為を注意されることがありますので、バーコードリーダーは明らかに不利です。
そして、アマゾンに連動した価格設定の現在のブックオフでは、棚の端から検索していく手法は無駄が多すぎるのです。
ただし、ピンポイントでバーコードリーダーを当てて、うまくやっていけるという人は使っても問題がないと思います。
人の才能はそれぞれですので、一概にバーコードリーダーが悪いとはいえません。

ピンポイントで本を見つける方法

ここではせどり初心者がバーコードリーダーに頼らずに、利益の出る本を見つける方法を紹介します。

値札シールの色をみる

ブックオフせどりの基本です。 ブックオフの値札シールにはその本がどの季節に仕入れられたものなのかを示す色がつけられています。
冬期(1月~3月)・・・黒
春期(4月~6月)・・・緑
夏期(7月~9月)・・・青
秋期(10月~12月)・・・赤
仮に今日が6月だとすると、新しく入荷した本には緑色のシールがついているはずです。
そこで、気になった本の中から、緑色のシールがついた本だけをサーチすれば良いのです。
たいていのブックオフにはせどりがいますから、きのう入荷した本はあらかたサーチされています。
きのうの本でさえ利益が出ないことがサーチ済みなのですから、数ヶ月前の黒や赤や青のシールをサーチしても時間の無駄です。

トコロテンされた本からみる

これもブックオフせどりの基本です。
ブックオフの単行本は、プロパーと呼ばれる棚(アマゾン価格に連動)とCと呼ばれる棚(100円~200円)があります。
プロパー棚の単行本は定期的にCの棚に移されてきます(この行為をトコロテンという)。
プロパーから一気に200円に値下げされるので、利幅が大きい場合もあります。
どれがトコロテンされた本かというのは、やはりシールをみればわかります。

トコロテンシール

プリントされた大きなシールの価格部分をふさぐような形で、スタンプ印字された小さな200円シールが貼られています。
これがトコロテンされた本の目印です。
最初からCの棚に入ってくる本にはプリント印字されたシールが貼られています(左上に入荷時期の色と年月がプリントされている)。

Cの棚のシール

普段からプロパーの棚も見ている人なら、背表紙を見ただけで「落ちてきたな」とわかるはずです。

一店舗で慣らす

ひとつの店で数回サーチすると、目が慣れるので以前サーチした本は覚えます。
そうすると同じ店に通っているのですから、新しく入荷した本は一目でわかるようになります。
そうなるまでに2~3か月も通えば十分でしょう。
そこまで行けば、せどり的に価値のない本は感覚的にわかってきます。
どんな本が利益が出そうかかも、何となくわかってくるのです。
慣れた店舗ではもちろん、初めての店舗に行ったとしても、ピンポイントでサーチして仕入れていけるでしょう。